エクソソーム療法での死亡例に関して

2024.02.14

先般、ある学会から、
エクソソームに関する死亡例があったとの声明が出されました。
亡くなられた方のご冥福を、深くお祈り申し上げます。
本件に関して、噂を含め、様々な情報が飛び交っていますが、
どのクリニックで起きたか、どのメーカーのエクソソームなのか、
未だに詳細は不明です。
しかし、実態として、エクソソームや幹細胞培養上清に関して、
法規制がされておらず、玉石混淆しているのが実態です。

そもそも、幹細胞培養上清とエクソソームが混同して認識されていたりします。
幹細胞培養上清は、幹細胞を培養した際に産生される副産物です。
この培養上清中に、
成長因子などの有効なタンパク質群が含まれていることが発見され、
有効活用できるのではないかと研究が重ねられてきました。
上田実先生が、第一人者として著名です。
エクソソームというのは、細胞外小胞という細胞から分泌される物質で、
マイクロRNAやメッセンジャーRNAなどを含んでいます。
細胞から分泌されるので、
幹細胞培養上清中にもエクソソームが含まれていることが、
ほとんどだと思いますが、
厳密には、幹細胞培養上清とエクソソームは、別物です。

今回の死亡例が、事実なのであれば、
2つの要因によるものかと推察されます。

まず、幹細胞培養上清もエクソソームも、
研究段階で、医薬品のように効果や副作用に関して、
ある程度明確になったものではありません。
真摯に研究を重ねている研究者や医師もたくさんいますが、
目を引く文言を並べて、拝金至上主義的に、
患者を集めているのも見受けられます。
あくまで研究用試薬であり、医師法のもと、医師の判断のもとで、
自由診療として患者に投与されるものです。
どの程度の量を、どの程度のスピードで投与すると、
どのような副反応があるのかも把握せずに、
何mLあたりいくらという料金設定をし、
大量に投与すると効果が高いというように謳い、
高額な料金を請求しているケースを目にします。

また、院内での保管などの取り扱いに関しても、注意が必要になります。
開封後は直ちに使い切り、残ったものに関しては決して使用してはいけません。
幹細胞培養上清などには、成長因子などのタンパク質が豊富に含まれているため、
空気中に含まれる菌などが、一瞬で増殖してしまいます。
しかし、アンプルに残ったものを次の患者に使っているケースがあるようです。

次に、製造環境ですが、
幹細胞培養上清やエクソソームは、
再生医療に用いる細胞加工物のように、許認可が必要なわけでもないですし、
どのような環境で、
どのような設備で製造しなければならないなどの規制もないです。
極端な話、私の家で製造してもいいわけです。
当社のように、厚労省から認可を受けた細胞培養加工施設で、
再生医療に用いる細胞培養技術を用いて、
幹細胞培養上清を調製している企業もありますが、
残念ながら、費用を抑えるために、
粗悪な環境で調製していることもあるようです。
また、培養技術が低いと、
コンタミネーションなどの危険性もありますし、
検査費用を抑えるために一般細菌検査、真菌検査、
マイコプラズマ検査、エンドトキシン検査などを
省いているケースもあります。
さらに、元となる幹細胞を採取する段階で、
ドナースクリーニングを実施していないケースもあります。
このあたりは、正直、費用に反映されやすい部分ではあります。
細胞培養加工施設は、イニシャルコストもランニングコストも、
莫大に必要ですし、
各種検査費用も高額なので、自ずと価格は高額になります。

このように、医療機関での扱い、製造環境、
この2点によるものが大きいと思います。
どのような取り扱いや製造環境や方法でも、
直ちに違法行為に直結するような行為ではないですが、
患者さまが死亡するようなことがあってはならないので、
正しく扱う必要があるものだと思います。

まだ研究用試薬であることから、
賛否含め、様々なご意見があって然るべきかと思いますが、
幹細胞培養上清もエクソソームも、
真摯に向き合って、未来の医療に活用できないかと研究している方々がいます。
正しい目的で、正しい方法で扱うことで、大きな効果を生む可能性があります。

扱われる医療機関さまにおかれましては、
どのような製造環境なのか確認を行なっていただき、
患者さまにおかれましては、
医師からベネフィットとリスクの説明を受けていただくようお願い申し上げます。

私どものお取引先では、事故や副反応の報告は現状1件もございませんので、
引き続き、安心・安全にご活用いただけるように、
また、人生100年時代のQOLの向上に寄与できるよう、
これからも真摯に取り組んでいく次第でございます。